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初日

ついに、始まりました, SEE THE SEA展

水彩画家、斎藤おさむさんとバッグ作家、榎本みょうがさんの作品は展覧会開催前にすでに数点売れてしまうという快挙を成し遂げました。更にみょうがさんの作品はアメリカ在住のアメリカの方に売れるという快挙。
新井正博さんの作品はなんと
人気がなく、まだ1点も売れていないという快挙を遂げました。(泣)

可哀そうだと思った人は、ぜひご来場して1点でも10点でも買ってあげてくださいね。

今回の展覧会には何と素敵な紹介文を榎本みょうがさんのお知り合いの
北海道立近代美術館の主任学芸員の方に
先方から率先して書いていただきました。本当にありがたく思っています。
こんなところでお礼を申しあげておきます。
せっかくですので会場に来れない方のためにその文章を紹介しましょう。


彼らの海、彼らのカラー 「See the Sea」展によせて  

                                           穂積 利明

斎藤おさむ、榎本みょうが、新井正博。三人の頭文字をとってS・ E・A。
「See the SEA」は、まずは、私たちを見てください、という タイトルだ。
3人の個人的に結びあったアーティスト、クリエイ ターのグループは、
自己紹介をするつもりでこの展覧会をひらくこ とにしたことが、
この展覧会名からもはかられる。
今更ながらいえば、彼らはある統一的表現分野や内容があって集
まったグループではない。タイトルがあらわすとおり、まずは展覧
会で人の目にさらされること、その人の目に洗われることが意図さ
れている。
しかしながら、三者三様の彼らのつくるものを並べて眺めている
と、ある共通項を読み解くこともできなくはない。筆者自身は、カ
リフォルニアの画家リチャード・ディーベンコーンの描く、抽象画
とも風景画ともつかない、不思議な色板の組み合わせで成立する作
品を思い出したりしたのだけれど、人によっては、からっと乾いて
いながらも単純化され、ある種の静謐さも漂うディヴィッド・ホッ
クニーの作品などを思い起こすことも可能であろう。三人の彼らの
作品は、その色遣い、色合い、カラーといったものが独特のような
気がする。
 「S・E・A」の順番に沿ってそれぞれについて 見ていこう。

 まず水彩画家の斎藤おさむ。北海道に生まれ、若干15歳で
小樽の看板職人を経験、その後、1970年代半ばに米国に渡っ
ている。80年半ばからはサングローバル美術協会、ビバリー
ヒルズ美術協会に所属して水彩画に専念するようになり、ロサンゼ
ルスカウンティ美術館でのグループ展などを拠点に作品発表を行っ
ている。その経歴どおりに、斎藤の作品にはカルフォルニアの具象
画の歴史を直結したような、おおぶりで大陸的な自然観と色彩が息
づいている。日本の水彩画が南画や水墨画に結びついているのに比
べると、エッジがクリアで、余白をもたない水彩画は、実にアメリ
カ的だ。色彩は混じり合わず、ミックスサラダのようにそれぞれが
それぞれのカラーを主張しながら、瑞々しく調和がとれている。
 
榎本みょうがの作品は、いわゆるファインアートではない。バッ
グクリエイターもしくはもっと素直にバッグ職人、というべきか。
斎藤と同じように80年代半ばからビジュアルアートの世界、
いわゆるデザインワークに関わるが、パソコンの画面上でハイテッ
クで自在なアートワークを扱いながらも、私生活では手仕事を愛
し、糸や布、リボンやボタンといった素材をもとに、さまざまな質
感と風合い、カラーと柄の組み合わせによるバッグづくりを試み
る。その世界観には、「ガーリー」という言葉に集約されるよう
な、少女文化がクールだった時代へのノスタルジーが含まれてい
る。中原淳一から藤田ミラノ、仲世朝子に至るような少女文化の系
譜。各バッグに張り込まれた複数の色板が見せるカラーは、少女な
のにプリティではなく、どこか褪せたものがある。そしてエッジ
は、やはりクリアなのである。

 新井正博は、三人の中で最も美術のメインストリームに近い経歴
をもつ版画家である。しかしながらそのスタートは決して早いとは
言えまい。本格的に版画家の道に踏み出すのは、1992年に
ニューオリンズ大学の大学院を卒業した30代半ばのことであ
る。窓、本や花、果実などの静物、窓から覗く風景、差し込む光な
どを描いたその作品は、まさに時間がとまったような静謐そのもの
の世界である。光のエッジは、やはりクリアになるように細く濃や
かに仕組まれている。しかしながら、そこにある色合いは、色合い
そのものが時間の流れをもっているかのようだ。それはただの一色
であっても、「うつりかわり」というものを内包したカラーなのである。
 
「カラー」という言葉は、色彩という意味の他に、明暗や水彩絵
具、人種や、外見や性格までを含むかなり広くて深い言葉である。
三人はそれぞれのカラーを保ちながら、それぞれの色とりどりの表
現やものづくりの海を泳いで行くのであろう。その三者三様の泳ぎ
方を、海辺のカフェで眺め見るように来場者に楽しんでもらえれ
ば、この展覧会は大成功といえるのではあるまいか。

(北海道立近代美術館主任学芸員/ NPO法人S-AIR理事)

Commented by shinia62 at 2010-04-10 00:30
紹介文を読んでいるとドキドキしてきます。この際、北海道からも沢山見に来てくれないかなあ。
Commented by Marrrsan at 2010-04-10 01:00
●さむさん
さむさんにとっては北海道の美術館の学芸員と言うのが
親近感を感じるでしょう。
北海道からはふ~さんが友人を連れて、月曜に来てくれるそうです。
Commented by shinia62 at 2010-04-10 04:36
群馬と北海道がグンと近くなった一瞬ですね。ふ〜さんが来てくれると言う事は北海道からも沢山見に来る予感みたいですね。(笑)
Commented by marrrsan at 2010-04-10 22:03
●さむさん
ぐんぐん群馬というキャッチコピーがあるくらいですから
ぐんまがぐんとちかくなるのは当たり前。ぐんまは北海道を
はたまた世界をぐんと近づけますよ。
さむさんのお知り合いのアメリカ人がみょうがさんの作品を
買ったように。
by Marrrsan | 2010-04-09 23:16 | Trackback | Comments(4)